(1) はじめに
当然補助金の多くには審査があります。 そして、ほぼすべてが申請書の記入内容によって採択の可否が決まります。
では、申請書とはどのように書いたらいいものなのでしょうか?1つの手段が、フレームワーク (枠組み) を用いた申請書作成です。 漏れやダブりを防ぎながら客観的に会社を分析することができるので、 第三者の目に対して自社の環境や方向性を訴えるためにはうってつけの方法といえます。 ここでは、申請書の基本とフレームワークを活用した作成方法について理解を深めていただきたいと思います。
活用するフレームワークの一覧
フレームワーク | 内容 |
---|---|
PEST分析 | 外部環境を抽出する分析。「政治 (Politics)」 「経済 (Economy)」,「社会 (Society)」,「技術 (Technology)」を切り口とする。 |
VRIO分析 | 自社の強みを抽出する分析。 「経済価値 (Value)」 「希少性 (Rarity)」, 「模倣困難性 (Imitability)」,「組織 (Organization)」を切り口とする。 |
3C分析 | 外部との関係性を抽出する分析。 「自社 (Company)」,「顧客(Customer)」,「競合(Competitor)」の切り口とする。 |
SWOT分析 | 内部環境と外部環境を総合的に抽出する分析。 内部環境を 「強みSWOT分析 (Strength)」, 「弱み (Weakness)」, 外部環境を「機会(Opportunity)」,「脅威(Threat)」の切り口とする。 |
アンゾフの成長ベクトル | 事業戦略の方向性を表した図。 「製品」 と 「市場」の2つの軸、「既存」 「新規」の2つの区分で表現し4つの領域がある。 |
ドメイン | 事業の方向性を文章で表現したもの。 「誰に」「何を」「どのように」を切り口とする。 |
売上のフレームワーク | 売上の構成をわかりやすく表現したもの。「客数」、「単価」を切り口とする。 |
(2) 補助金の申請書を知ろう
① 申請書はビジネスコンテストの応募用紙
補助金事業は国や自治体が行うビジネスコンテストのようなものです。 国や自治体は政策に沿った事業に対して投資を行い、投資先が収益を上げることで得られる税収というリターンを求めています。 公的な資金が投入されるため当然のことながら厳しい審査が行われます。 審査員は皆さんの考えるビジネスプランの収益性、実現可能性、独自性、革新性、具体性といった点に加え、内容が応募要項に沿っているかといった点を審査します。
例えば、販路開拓の助成を目的とした小規模事業者持続化補助金では、
(i) 計画の経済効果に実現可能性があるのか?
市場のニーズや市場動向を捉え、売上の増加 (新規顧客の獲得. 既存顧客の流出防止、購買点数・単価・頻度)が見込める計画なのか?
(ii)計画の創意工夫 (独自性、革新性、新規性)があるのか?
自社提供する商品やサービスに特徴や強みがあり, 競合との差別化ができているのか?他社が真似できない革新的なビジネスモデルになっているのか?
(ⅲ) 自社の経営方針や経営目標に沿っているのか?
事業の内容と経営方針の一貫性が確保できているのか?自社のありたい姿を実現するための計画になっているのか?
(iv) 計画を実行するための行動計画に具体性があるのか?
計画のスケジュールや役割分担が明確になっているのか?資金調達や資金の使用用途が明確になっているのか?
(v) 計画が地方創生 (社会貢献) に資するか?
対象事業を行うことで雇用の創出や地域活性化、地域の課題解決が期待できるのか?
といった内容が審査されます。
審査員は大量に応募されてくる申請書を短期間に審査し、合否を判断する必要があります。 また、審査員は申請書だけを見て判断するため、申請書で全てを語る必要があります。 当然の事ながら補足説明等はできません。
さて、皆さんが審査員の立場ならどんな申請書を通したいと思われるでしょうか?きっと、抜け漏れ・ダブりがなく簡潔に情報が整理されていて、一度読んだだけで内容がスッと理解できる、そんな申請書を通したいと思われるのではないでしょうか。
様々な情報を抜け漏れ・ダブリがなく整理するための強力な武器となるのがフレームワークなのです。
② 申請書作成の実際
補助金を得るにあたっては、その補助金を所管する省庁または地方公共団体等の指定する事務局あてに申請書を提出し、審査を受けて採択される必要があります。
申請➡審査➡採択➡交付
一般的な補助金の申請には (i) 応募申請書, (ii) 事業計画書, (ⅲ) 経費明細書を作成します。 審査では提出された申請書類に基づき、その事業の目的が、補助金の目的に合致しているかどうかを判断します。そのため審査員に認めてもらえるような申請書類を準備する必要があります。
申請書類の中で (i) 応募申請書 (ⅲ) 経費明細書は形式的な必要事項を記載するものです。 誤字脱字や計算ミス、記載場所を間違わない等、基本的なこ
とに注意すれば、それほど頭を悩ますことはないでしょう。 しかし、(i) 事業計画書は、審査対象の中心であり、審査結果に重要な影響を与えます。
事業計画書には主に以下の内容を記載します。
・企業概要
・顧客ニーズの動向
・競合の動向
・事業の内容
・事業の収益性
・事業の効果
自社やターゲット市場を客観的かつ多面的に分析し、その分析に基づき立案した事業戦略を記載することができれば、その事業計画書は第三者にとってもわかりやすく説得力のあるものになるはずです。